鯨飲馬食なんて眉をひそめる人もいる。
けれど、この酒で鯨飲馬食は
ちょっと例外。
高知の酒である。
大酒飲みが多い土地柄。かつての君主、山内容堂が自ら名乗った「鯨海酔候」に由来する、名酒が酔鯨だ。名前が名前だから
鯨飲馬食したくなるが、たしかに食中にぐいぐい飲める。
ことさら香りは強くない。けれど、きりっとして旨味はしっかり。
飲みながら食えば、飯は旨くなり、食って飲むうちに
酔鯨はますます旨くなる。

なんて酒なんだ。

土佐は森林の多い土地だ。ほかの四国の地域とくらべて雨も多い。
それは豊富な水がそこにあることを意味する。
酒造りにとって大切な水がたえまなく湧き出る。一方で、この土地は温暖で決して酒造りに好適ではない場所。
だからこそ工夫をかさねて旨い酒を造ってきた。

持ちえたものと
持ちえなかったものとを
知恵でもって一つにたばねた。
そうしてできた旨い酒、酔鯨。
鯨飲馬食も、酔鯨ならば、良し、である。